大判例

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大阪高等裁判所 昭和59年(う)1243号 判決

本件当日の関西単一労働組合(以下,関単労という)の争議は,事前の通告のないまま既に争議の態勢に入ってのち,管理権者である黒川工場長に聞かれて初めて通告書を渡すなど甚だ当を得ない方法で始められており,街宣車を利用する罷業の示威行動を会社が乗り入れを禁止している構内で駐車して行い,判示のごとき管理権者の正当な理由を挙げての再三の撤去要求を拒否して,正常な会社業務,少くとも当日の朝礼を中止させたことも証拠により明らかであるが,他方,同被告人の拒否目的は,専ら右示威行動,集会を自己の思い通りに行う狙いがあったに過ぎないと判断され,他に争議のための正当な目的があったとも認められないところ,罷業や罷業中の示威行為が間接的に結果として会社の業務活動に影響を及ぼすことは,その効果として已むを得ないとしても,積極的に業務活動を妨害する方法で行うことは許されないし,罷業や罷業中の示威行為のために,管理権者の正当な要求があるにも拘らず,その意思に反して会社の物的設備を使用する権利はないというべく,又被害者原田の被害の程度が,後に判示の公訴事実第三の被害と併せて医院の治療を受けていることが証拠により認められる程度の暴行を受けたものであることに照すと,同被告人の判示所為は到底争議に伴う相当行為として可罰的違法性を阻却するものとは判断できない。

次に,公訴事実第二,第三の各被告人等の共同暴行の発端は,上坂が新行内によって開放されている充填室中央出入口北側扉を閉めようとしたことによる紛争にあることは原判決判示のとおりであるが,充填室が食品の製造工場であり,業務上己むを得ない場合を除いて食品衛生上の見地から閉鎖しておくべきことが要請され,会社もそれを励行してきており,当時充填室においてはまさに牛乳を製造中であったのであり,上坂が新行内に再度にわたって閉鎖を口頭指示したことは,上坂の当然に正当な措置であって,この指示を拒否して上坂の襟首をつかんで反発した新行内の行動が事後の紛争の契機となっているというのが正しく,上坂と同人の揉み合いとみるよりもむしろ上坂が新行内から暴行被害を受けていたものであり,又その際,被告人神田が肩にかけていた携帯用マイクのスピーカーが床上に落下した原因も,同被告人がスピーカーを無用に上坂の顔面に当てて放送する挑発的な暴挙に出たのに対して,上坂がこれを払いのけた防禦行動によるもので,同人の責に帰せられるべきものではなく,同被告人着用のゼッケンが破れた原因が上坂の行動によるものとは認め難いことも判示のとおりである。そして当日関単労組合員が行っていた争議は,前示のとおり罷業と,罷業中の示威行動であり,示威行動の効果を挙げるねらいがあるにせよ,会社の意に反して会社の物的設備を使用する権利はなく,又これらの行動のため会社の正当な業務遂行行為を有形力を行使して妨害阻害する権利を含んでいないことは論をまたないのであって,食品製造中の室の扉をみだりに開放する行動は,本件の正当な争議行動の範囲に含まれず,新行内の拒否行動がむしろ違法な行動であって,それに続いて発生した被告人らの第二,第三の各所為の態様も優に数人共同した暴行に該当することも明らかである。従って,本件が上坂の争議妨害に端を発した被告人らの抗議行動であり,その行為の態様も争議中の抗議行動として相当性の範囲を逸脱するものではないとした原判決の判断は縷説するところにかかわらず,すべて肯認できず,法令の解釈,適用を誤ったもので,その誤りが判決に影響を及ぼすことが明らかであるから,検察官の論旨は理由がある。

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